アパート空室部分の貸家建付地評価
最近、アパート・マンションといった賃貸住宅は、地域によっては林立状態で特に築年数が経っているものなど空室が目立つようです。
さて、相続税、贈与税の財産評価をする際に貸家の敷地は、借家権の制限を受けることから貸家建付地として次の算式による評価を行い、自用地評価額より減額することが認められています。
自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
アパートなどの独立部分(各室)がある貸家の賃貸割合は、全体のうちの賃貸部分の床面積割合によります(財産評価基本通達26)が、この割合は財産の取得の時による(相続税法第22条)ことから、相続税の場合には相続開始時の空室部分は賃貸部分に含めないことになります。
しかし、財産評価基本通達26では、その2で次のように弾力的な運用を認めています。
賃貸部分には、継続的に賃貸されていた各独立部分で、課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められるものを含む |
さてこの一時的に賃貸されていなかった部分ですが
によると以下のとおりです。
(1) 各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきたものであること。 (2) 賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われ、空室の期間中、他の用途に供されていないこと。 (3) 空室の期間が、課税時期の前後の例えば1か月程度であるなど、一時的な期間であること。 (4) 課税時期後の賃貸が一時的なものではないこと。 |
この中で実務上混乱しているのが(3)の空室期間で、例としてわずか1月としているところです。現実問題として、リフォームの関係もありますし、さらに現在の貸家状況によると1月後に新たな賃借人が入ることは珍しいでしょう。
この件に関して、非公開ですが次の2つの裁決の判断とその基準を紹介します。
いずれも1月を超える建物の空室部分について、それぞれの諸事情を総合勘案して一時的に空室となっていたにすぎないものであるとし賃貸割合に含めることを認めています。
1.平成21年10月13日 裁決
1.空室期間は約9か月であるが、空室の管理については、10年以上前から継続して不動産管理業者に委託し、空室になった場合の入居者募集等を含めた不動産賃貸に関するほとんどすべての業務を行わせている。 2.建物の周辺にはアパート等の賃貸住宅が林立していること及び不動産管理業者の担当者の答述からすると、空室が発生したからといって速やかに新たな賃借人が決定するような状況ではなかった。 |
2.平成20年6月12日 裁決
1.空室の相続開始時における期間は、短いもので2か月、長いもので1年11か月ではあるが、空室について速やかに所要の手当てを施した上で不動産業者に入居者募集の依頼を行っている。 2.築25年のこの建物について定期的に補修等を施すなど、経常的に賃貸に供する意図が認められる。 3.建物の近隣周辺にはマンション等の共同住宅が林立していることからすると、空室が発生したからといって速やかに新入居者が決定するような状況ではなかった。 4.この建物の各部屋の間取りは20室すべてが統一されたものであり、各室に対応した駐車スペースも確保されるなど、その形状は共同住宅としてのものにほかならない。 |
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(ふくい かずのり ぜいりしじむしょ)
所長 税理士 福井一准(現在 東京地方税理士会保土ヶ谷支部 副支部長)
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