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2019年9月 4日 (水)

国税庁長官の指示を受けて評価した相続財産の価額(その1 裁決から見る解釈)

相続税における相続財産の価額は、次のとおりとされています。

 

相続財産の価額は、原則として取得の時における時価による(相続税法第22条)。

この財産の価額は、時価によるものとし、時価とは、相続により財産を取得した日において、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額である。そして、その価額は、財産評価基本通達の定めによって評価した価額による(財産評価基本通達総則1(2))。

ただし、この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する(財産評価基本通達総則6)。

 

令和元年8月27日、東京地方裁判所にて相続開始前3年前後に借入金により購入した賃貸不動産2物件の相続税評価額について、国税庁長官の指示を受けて評価した価額とすることが適当であるとした判決が出たそうです。

 

これは、取得価額合計約13億8千万円の賃貸不動産2件を約10億円の借入金で取得し、3年後の相続時に財産評価基本通達に基づく評価額約3億3千万円として相続税申告したところ、同通達総則6項「この通達の定めにより難い場合の評価」として12億7千万円の評価額によるとした更正処分を受けたことに対する裁判です(週間税務通信NO.3570より)。

 

判決文の詳細はまだ確認できていませんが、その前段階の国税不服審判所の裁決は公表されています。

 

平成29年5月23日裁決

 

この裁決によると、通常の評価が財産評価基本通達によることは次のような解釈によります(要約)。

 

相続財産の価額は、特別に定める場合を除き、財産取得時における時価によるべきもので、この時価とは相続開始時におけるその財産の客観的な交換価値をいう。

しかし、客観的な交換価値というものが必ずしも一義的に確定されるものではないことから、課税実務上は、相続財産評価の一般的基準が評価通達によって定められ、そこに定められた画一的な評価方法によって相続財産を評価することとされている。これは、あらかじめ定められた評価方法によりこれを画一的に評価する方が、納税者間の公平、納税者の便宜、徴税費用の節減という見地からみて合理的であるという理由に基づく。

この評価通達に定められた評価方法が合理的なものである限り、全ての納税者に適用されることによって租税負担の実質的な公平をも実現することができることから、特定の納税者あるいは特定の相続財産についてのみ評価通達に定める方法以外の方法によってその評価を行うことは、納税者間の実質的負担の公平を欠くことになり、許されないものというべきである。

 

例外として総則6による評価ができるのは、相当と認められる特別な事情がある場合で、次のような解釈によります(要約)。

 

評価通達に定める評価方法を画一的に適用するという形式的な平等を貫くことによって、富の再分配機能を通じて経済的平等を実現するという相続税の目的に反し、かえって実質的な租税負担の公平を著しく害することが明らかな場合には、別の評価方法によることが許されるものであり、このことは、評価通達において「通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」と定められていることからも明らかなものというべきである。

すなわち、相続財産の評価に当たっては、特別の定めのある場合を除き、評価通達に定める評価方法によるのが原則であるが、評価通達によらないことが相当と認められるような特別の事情のある場合には、ほかの合理的な時価の評価方法によることが許されるものと解するのが相当である。

 

まとめると次のように捉えられると考えます。

 

1.財産評価基本通達に定められた評価方法が合理的なものである限り、全ての納税者に適用される。

2.実質的な租税負担の公平を著しく害することが明らかな場合といった評価通達によらないことが相当と認められるような特別の事情のある場合には、ほかの合理的な時価の評価方法による。

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福井一准税理士事務所

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