2019年5月31日 (金)

相続開始前3年以内に相続取得等をしていた場合の事業用宅地等

平成31年度(令和元年度)税制改正で、小規模宅地等の特例における特定事業用宅地等から、相続開始前3年以内に「新たに事業の用に供された宅地等」(末尾注)が除かれることとなりました(措置法第69条の4第3項第1号)。

 

この特定事業用宅地等のいわゆる3年縛りに関して、相続等により取得した宅地等は「新たに事業の用に供された宅地等」に該当しないことが明らかになりました(措置法施行令第40条の2第9号・要約は下記のとおり)。

 

被相続人が相続開始前3年以内に開始した相続又はその相続に係る遺贈により事業の用に供されていた宅地等を取得し、かつ、その取得の日以後その宅地等を引き続き事業の用に供していた場合におけるその宅地等は、新たに事業の用に供された宅地等に該当しないものとする。

 

また、この取扱いは貸付事業用宅地等(措置法第69条の4第3項第4号)にも準用されることとされました(措置法施行令第40条の2第20号)。

 

このような場合は、相続等による取得前の(貸付)事業の用に供されたときが、新たに(貸付)事業の用に供されたときになる(通算される)と解されます。

 

(末尾注)

ただし、その宅地上の被相続人等が所有する事業用建物、構築物、その他一定の減価償却資産の価額の合計額が、その宅地等の価額の15%以上である場合には、適用の対象となります。なお、価額は全て相続開始時の価額です(措置法施行令第40条の2第8号)。

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2019年5月27日 (月)

債務控除における確実な債務

被相続人が賃料未払のため生前に解除された借地契約の約定により相続人が負うこととなった建物を収去して土地を明け渡す債務は、債務控除の対象となると判断した裁決例が公開されています。

 

平成30年7月9日裁決

 

課税庁は、土地に係る明渡義務の金額は零円である。

また、建物に係る収去義務は、相続開始日において、必ずしも建物を収去する必要はなく、建物を地主承継人(地主が死亡していたため、引き継いだ相続人をいっています)に引き渡す方法が選択可能であったことから、その履行が確実な債務とは認められず、債務控除の対象とはならないとしました。

 

これに対して国税不服審判所は、まず下記の最高裁判決を引用しました(そのまま引用)。

 

相続税は、財産の無償取得によって生じた経済的価値の増加に対して課される租税であるところから、その課税価格の算出に当たっては、取得財産と控除すべき債務の双方について、それぞれの現に有する経済的価値を客観的に評価した金額を基礎とするものであり、ただ、控除すべき債務については、その性質上客観的な交換価値なるものがないため、交換価値を意味する「時価」に代えて、その「現況」により控除すべき金額を評価する旨定められている(相続税法第22条)ものと解される。これを弁済すべき金額の確定していない債務の評価についていえば、評価の対象となる債務は確実と認められるものに限る(相続税法第14条第1項)のであるから、このような弁済額未確定の債務は、弁済すべきことが確実と認められる金額の限度で相続税法第22条にいう取得財産の価額から控除すべき債務として評価の対象となるのであり、そのような金額の債務として評価した結果により、控除すべき金額が決まることとなる(最高裁昭和49920日第三小法廷判決・民集2861178頁)。

 

上記を踏まえ、次のとおり判断しました(そのまま引用)。

 

相続税法第14条第1項に規定する「確実と認められる」債務とは、相続開始当時の現況に照らし、その履行が確実と認められるものをいうと解されるところ、本件債務は、本件相続開始日に現に存し、その履行を免れないものであるから、履行が確実な債務であったと認めるのが相当であり、これを覆すに足る証拠は見当たらない。原処分庁が述べるところは、確実な債務についての履行手段をいうものであって、これは本件相続開始日後の事情というほかなく、相続税法第22条が控除すべき債務の金額はその時の現況による旨規定している趣旨に照らし、採用できない。

 

なお、「原処分庁が述べるところ」とは「必ずしも建物を収去する必要はなく、建物を地主承継人に引き渡す方法が選択可能であったこと」をいっています。

 

参考までに関連法令等は下記のとおりです。

 

相続税法第14条第1項

前条の規定によりその金額を控除すべき債務は、確実と認められるものに限る。

 

相続税法第22条

この章で特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。

 

相続税法基本通達14-

債務が確実であるかどうかについては、必ずしも書面の証拠があることを必要としないものとする。

なお、債務の金額が確定していなくても当該債務の存在が確実と認められるものについては、相続開始当時の現況によって確実と認められる範囲の金額だけを控除するものとする。

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2019年5月14日 (火)

空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例(令和元年度税制改正のあらましより)

令和元年度税制改正のうち譲渡所得関係について、改正法令を基にしたあらましについてのパンフレットが国税庁サイトに掲載されています。

 

個人の方が土地・建物や等株式等を譲渡した場合の令和元年度税制改正のあらまし

 

空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例について、相続開始時に被相続人が老人ホーム等に入居していた場合、平成31年4月1日以後に譲渡したものから一定の要件を満たす場合にはこの特例の適用を受けることができることされました。

 

上記パンフレットからこの改正については、以下の2つの事由と要件が重要となります。

 

1.相続の開始の直前において次の事由(特定事由)により、被相続人の居住の用に供することができなかったこと

介護保険法に規定する要介護認定等を受けていた被相続人その他これに類する被相続人が、老人ホーム等(注)に入居等していたこと

(注)老人福祉法に規定する認知症対応型老人共同生活援助事業が行われる住居、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホームその他一定の施設(詳細はパンフレット参照)

 

2.次の要件を満たすこと

・特定事由により被相続人居住用家屋が被相続人の居住の用に供されなくなった時から相続の開始の直前まで、引き続きその被相続人居住用家屋が被相続人の物品の保管その他の用に供されており、事業の用、貸付けの用又は被相続人以外の者の居住の用に供されていたことがないこと

・老人ホーム等に入所をした時から相続の開始の直前までの間において、被相続人が主としてその居住の用に供していたと認められる家屋がその老人ホーム等であること

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2019年4月26日 (金)

老人ホームに入居後、自宅を建替えた場合の小規模宅地等の特例

被相続人が相続開始時に老人ホームに入居等していても、一定の要件を満たす場合には、被相続人が老人ホームに入居等する直前に被相続人の居住の用に供されていた宅地等は小規模宅地等の特例(措置法第69条の4)の適用を受けることができます(概要は下記参照)。

 

小規模宅地等の新たな取扱い(老人ホーム等)

 

被相続人が老人ホームに入居等した後に、その自宅を建替えた場合、小規模宅地等の特例の適用は受けられるのかどうかというご質問をいただきました。

通達、情報等にははっきりとした記載はなく、ネットで調べると「できない」という記述も見受けられるのですが、条件次第で適用可能だと考えています(私見です)。

 

条件には、建替えられた自宅が被相続人または被相続人の親族が所有するもので、被相続人が老人ホームに入居等する直前に被相続人と生計を一にしていた親族が建替え後の自宅に速やかに居住した場合等が考えられます。

これは、措置法通達69の4-8(居住用建物の建築中等に相続が開始した場合)の類推適用によります(通達の内容は下記参照)。

 

建築中である自宅敷地の小規模宅地等特例

 

被相続人の居住の用には、老人ホームに入居等して居住の用に供されていなかった場合(ただし、一定の用途に供されている場合は除かれます)における直前の被相続人の居住の用を含むとされており(措置法第69条の4第1項)、その居住用の建物が建替え中であっても、一定要件に該当すれば、その敷地も上記通達により小規模宅地等の特例が適用できることから、建替え後被相続人が老人ホームに入居したままであっても当然適用は可能であるという判断です。

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2019年4月23日 (火)

平成31年(2019年)分の路線価図等

平成31年(2019年)分の路線価図等は、7月1日(月)より公開の予定です。

 

平成31年(2019年)分の路線価図等の公開予定日について

 

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2019年1月10日 (木)

老人ホーム入居中に自宅を相続した場合の小規模宅地等の特例

 

老人ホーム入居前の自宅をその老人ホーム入居中に相続により取得し、その後その自宅に戻ることなく死亡した(所有者として居住の用に供したことがなかった)場合の小規模宅地等の特例(措置法第69条の4)の適用について、国税庁の文書回答事例で公表されています。

 

 

 

老人ホームに入居中に自宅を相続した場合の小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(租税特別措置法第69条の4)の適用について

 

 

 

要約は以下のとおりです。

 

 

 

 

措置法第69条の4第1項より、(一定の要件を満たせば)被相続人が所有者である老人ホームに入居等する直前に居住の用に供していた宅地等は、特例の対象となる宅地等に当たることは明らかである。

 

しかし、被相続人が老人ホーム入居等の直前において居住の用に供していた宅地等の所有者ではなく、その宅地等を取得した後はこれを居住の用に供していない場合の取扱いに疑義が生じる。

 

この点について、特例の対象となる宅地等であるかは、被相続人が老人ホームに入居等して居住の用に供されなくなった直前の利用状況で判定することとされており、その時において被相続人が宅地等を所有していたか否かについては、法令上特段の規定は設けられていない。

 

このことから、事例のケースでは特例の対象となる宅地等に該当するものと解される。

 

 

 

 

 

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2018年12月25日 (火)

平成31年度税制改正大綱より特定事業用宅地等の見直し

 

平成30年度の税制改正では、小規模宅地等の特例(措置法第69条の4)のうち特定居住用宅地等と貸付事業用宅地等の見直しがされました。

 

 

 

先日発表された平成31年度税制改正大綱で、特定事業用宅地等についての見直しが予定されています。

 

 

 

内容は下記のとおりです(そのまま抜粋)。

 

 

 

 

 

 

小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例について、特定事業用宅地等の範囲から、相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等(当該宅地等の上で事業の用に供されている減価償却資産の価額が、当該宅地等の相続時の価額の15%以上である場合を除く。)を除外する。

 

(注)上記の改正は、平成31年4月1日以後に相続等により取得する財産に係る相続税について適用する。ただし、同日前から事業の用に供されている宅地等については、適用しない。

 

 

 

 

小規模宅地等の特例がさらに複雑化していきそうです。

 

 

 

 

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2018年10月 5日 (金)

地積規模の大きな宅地の評価のポイント

 

先日受けた研修「地積規模の大きな宅地の評価の適用についての実務上の留意点」についての備忘録です。

 

平成30年1月1日以後の相続または贈与により取得した場合に適用できる地積規模の大きな宅地の評価(財産評価基本通達20-2)のポイントは以下のとおりです。

 

 

 

1.地積基準

 

(1)三大都市圏・・・500㎡以上

 

(2)上記以外・・・・・1,000㎡以上

 

<留意点>

 

広大地の適用可能であったミニ分譲は除かれる。

 

 

 

2.適用できる地区

 

(1)普通商業・併用住宅地区

 

(2)普通住宅地区

 

(3)市街化調整区域で宅地開発が可能な宅地または地域

 

<留意点>

 

広大地の適用可能であった中小工業地域は除かれる。

 

正面路線価が2以上の地区にわたる場合は、過半の属する地区で判定する。

 

 

 

3.容積率基準

 

指定容積率(建築基準法第52条第1項)400%(東京23区内は300%)以上は除外

 

<留意点>

 

個別容積率で判定しない。

 

対象地が2以上の異なる容積率にまたがる場合は、指定容積率を面積割合により加重平均して求めた容積率で判定する。

 

 

 

4.開発道路は必要要件ではない。

 

<留意点>

 

路地状開発地や奥行の浅い宅地も適用可能。

 

 

 

5.「現に宅地として有効活用されていない」という要件はない。

 

<留意点>

 

敷地上にどのような建物が建っていても適用可能。

 

 

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2018年8月 8日 (水)

新たに貸付事業の用に供された場合(小規模宅地等の特例)

 

平成30年4月1日以後の相続等による取得より、小規模宅地等の特例の対象となる貸付事業用宅地等(措置法第69条の4第3項第4号)が改正され、相続開始前3年以内に「新たに貸付事業の用に供された」宅地等は原則として適用除外となりました。

 

詳細は、下記を参照してください。

 

 

 

小規模宅地等の特例・貸付事業用宅地等の改正

 

 

 

この場合の「新たに貸付事業の用に供された」とは、次の場合をいいます(以下、措置法通達69の4―24の3)。

 

 

 

 

 

 

1.貸付事業の用以外に供されていた宅地等が、貸付事業の用に供された場合

 

2.宅地等やその上にある建物等について「何らの利用がされていない場合」のその宅地等が、貸付事業の用に供された場合

 

 

 

 

したがって、賃貸借契約等につき更新がされた場合は、「新たに貸付事業の用に供された」場合に該当しないことになります。

 

 

 

また、次のような場合における貸付事業用の建物等が一時的に賃貸されていなかったとき、その建物等に係る宅地等は「何らの利用がされていない場合」に該当せず、それぞれ退去前、建替え前、休業前の賃貸に係る貸付事業の用に供された時が「新たに貸付事業の用に供された」時となります。

 

 

 

 

 

 

1.次のような退去の場合

 

継続的に賃貸されていた建物等の賃借人が退去をした場合で、その退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われ、賃貸されていたとき。ただし、新たな賃借人が入居するまでの間、その建物等を貸付事業の用以外に供していないときに限ります。

 

2.次のような建替えの場合

 

継続的に賃貸されていた建物等の建替えが行われた場合で、建物等の建替え後速やかに新たな賃借人の募集が行われ、賃貸されていたとき。ただし、その建替え後の建物等を貸付事業の用以外に供していないときに限ります。

 

3.次のような休業の場合

 

継続的に賃貸されていた建物等が災害により損害を受けたため、その建物等に係る貸付事業を休業した場合で、その貸付事業の再開のためのその建物等の修繕等が行われ、貸付事業が再開されていたとき。ただし、休業中にその建物等を貸付事業の用以外に供していないときに限ります。

 

 

 

 

 

 

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2018年7月30日 (月)

特定貸付事業の留意点(小規模宅地等の特例)

平成30年4月1日以後の相続等による取得より、小規模宅地等の特例の対象となる貸付事業用宅地等(措置法第69条の4第3項第4号)が改正され、相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等は適用除外となりました。

 

 

 

ただし例外として、被相続人等が相続開始の日まで3年を超えて引き続き特定貸付事業(措置法施行令第40条の2第16項)を行っていた場合には、相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等も適用対象となります(措置法第69条の4第3項第4号括弧書き)。

 

詳細は、下記を参照してください。

 

 

 

小規模宅地等の特例・貸付事業用宅地等の改正

 

 

 

上記例外については、次の留意点が通達で新たに示されています。

 

 

 

1.相続開始の日まで3年を超えて特定貸付事業が引き続き行われていない場合(措置法通達69の4-24の5)

 

 

 

次のいずれにも該当する場合、小規模宅地等の特例の対象となる貸付事業用宅地等から除かれます。

 

 

 

・相続開始前3年以内に新たに被相続人等が行う特定貸付事業の用に供された宅地等である場合

 

 

 

・上記の貸付の用に供された時から相続開始の日までの間にその被相続人等が行う貸付事業が特定貸付事業に該当しないこととなったとき

 

 

 

2.特定貸付事業を行っていた被相続人等がその貸付事業の用に供していた(以下、「特定貸付事業に供していた」とします)宅地等となる場合(措置法通達69の4―24の6

 

 

 

被相続人等とは、被相続人又は被相続人と生計を一にしていた親族をいいます(措置法第69条の4第1項)が、「特定貸付事業に供していた」場合とは特定貸付事業を行う被相続人等が宅地等をその自己が行う特定貸付事業の用に供した場合をいいます。

 

したがって、次のようなときは「特定貸付事業に供していた」ことにはなりません。

 

 

 

・被相続人が特定貸付事業を行っていた場合に、被相続人と生計を一にする親族が宅地等を自己の貸付事業の用に供したとき

 

 

 

・被相続人と生計を一にする親族が特定貸付事業を行っていた場合に、被相続人又はその親族以外の被相続人と生計を一にする親族が宅地等を自己の貸付事業の用に供したとき

 

 

 

 

 

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