2019年7月30日 (火)

住宅借入金等特別控除と居住用財産の譲渡所得の3千万円控除(併用制限のない場合)

以前、措置法第35条の居住用財産の譲渡所得の3千万円控除(以下、「3千万円控除」とします)と措置法第41条の住宅借入金等特別控除の併用制限について書きました。

 

住宅借入金等特別控除と居住用財産の譲渡所得の3千万円控除

 

概略は下記のとおりです。

 

居住年の前々年・前年、居住年及び居住年の翌年・翌々年(居住年を真ん中に5年間)において3千万円控除の適用を受けた場合には、居住年から10年間(適用可能な全期間)について住宅借入金等特別控除の適用を受けることができない。

ただし、住宅借入金等特別控除の適用を受けていた者が居住年の翌年または翌々年に3千万円控除の適用を受ける場合には、その譲渡をした日の属する年分の所得税の確定申告期限までに、その前年分又は前々年分の所得税についての住宅借入金等特別控除を取りやめる修正申告書または期限後申告書を提出し、かつ、期限内に納付すること。

 

では、前年又は前々年に住宅借入金等特別控除の適用を受けていた居住用財産を譲渡して3千万円控除を受ける場合、上記の修正申告等が必要でしょうか。

この場合には修正申告等は不要で、要件を満たせば3千万円控除の適用を受けることができます(ただし、当年、翌年、翌々年の何れかに新たに居住用財産を購入した場合、その居住用財産に住宅借入金等特別控除は適用できません)。

 

上記の修正申告等の取扱いは、住宅借入金等特別控除の適用を受けていた居住用財産以外の財産を譲渡して3千万円控除の適用を受ける場合のものです(措置法第41条第21項)。

 

(上記の修正申告等の取扱例)

新居住用財産を購入して住み替え後の3年経過年の末日までに、旧居住用財産を売却する場合。

新居住用財産に住宅借入金等特別控除を適用していたところ、旧居住用財産に3千万円控除を適用しようとするときは、上記の修正申告等の取扱いの対象となる。

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2019年7月26日 (金)

遺留分侵害額の請求で金銭以外の資産の移転があったとき

民法改正により令和元年7月1日の相続以降、遺留分権利者等は遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができることとされました(民法第1046条第1項)

これにより、令和元年7月1日の相続以降は遺留分権利者等の遺留分侵害額に対し金銭以外の資産を移転した場合、代物弁済として課税関係が生じるのかどうか注目されていました。このほど、所得税基本通達33-1の6が新設され、代物弁済として課税関係が生じることが明らかになりました。同通達の要約は下記のとおりです。

 

遺留分侵害額相当の金銭の支払請求があった場合において、金銭の支払に代えて、その債務の全部又は一部の履行として資産の移転があったときは、その履行をした者は、原則として履行時の消滅債務相当額によりその資産を譲渡したこととなる。

 

したがって、移転した資産が譲渡所得の対象となる資産で、譲渡益が生じる場合、譲渡所得課税の問題が生じることになります。

 

なお、この履行を受けて移転した資産の取得についての同通達38-7の2も新設され、その要約は下記のとおりです。

 

遺留分侵害額相当の金銭の支払請求があった場合において、金銭の支払に代えて、その債務の全部又は一部の履行として資産の移転があったときは、その履行を受けた者は、原則として履行時の消滅債務相当額によりその資産を取得したこととなる。

 

代物弁済なので、代償分割等と同様な課税関係になるようです

 

(参考)所得税基本通達新旧対照表

「所得税基本通達の制定について」関係(P53からP55

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2019年7月22日 (月)

要介護認定等の判定時期に注意(空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除)

空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除(措置法第35条第3項)は要介護認定等により一定の老人ホーム等へ入居していた場合でも適用が可能となりました(同条第4項、措置法施行令第23条第6項)。概略は下記を参照してください。

 

空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例(令和元年度税制改正のあらましより)

 

この場合における要介護認定等の判定時期が措置法通達35-9の2の新設で明らかになり、下記のとおりとされました。

 

被相続人居住用家屋がその被相続人の居住の用に供されなくなる直前において、その被相続人が要介護認定等を受けていたかにより判定する。

 

つまり、老人ホーム等へ入居する直前に要介護認定等を受けている必要があります。

 

似たような取扱いが相続税の課税価格の計算特例である小規模宅地等の特例(措置法第69条の4)にありますが、この場合は被相続人の相続開始直前において認定を受けていたかにより判定することとされています(措置法通達69の4-7の2)。

判定時期が異なっているので、要注意です。

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2019年6月28日 (金)

駐車場の舗装等を贈与したことによる所得の帰属

アスファルト舗装やフェンスといった設備を施し駐車場として貸していた父が所有する土地について、その駐車場設備を子に贈与するとともに土地の名義はそのままで子に使用貸借する契約をして、その駐車場に係る所得が子に帰属するとしたことについて、国税当局が父に帰属するものとした処分を不服として争った裁決が公表されています。

 

平成30年10月3日裁決

 

国税不服審判所は、贈与契約及び土地使用貸借契約について、請求人()がその意思に基づいて各契約書に署名・押印したものと認められるものの、次のような事実から、各契約が有効に成立したと認めることはできないとして、駐車場に係る所得は父に帰属するものと判断しました。

 

1.各契約書の作成目的は、父の相続対策の一環として、その所有不動産から生ずる賃料収益の一部を親族間で分散し、租税負担を軽減させることにあった。

その目的の下、土地の所有権を父に留保したまま、その使用収益権原のみを相応の対価を発生させることなく他に移転する方法として、子への土地の使用貸借及び駐車場設備の贈与という形式が採られたものと認められる。

これは次の理由による。

・父は契約当時、高齢であったこと

・各契約書の作成をはじめとした一連の取引行為については、子が父の相続対策の相談をしていた税理士法人が企図したものであること

・各契約書の書式もその税理士法人が作成したものと認められること

・契約の前後において、その駐車場としての利用状況や不動産管理会社を介しての管理状況自体に特段の変化が認められないこと

 

2.次の事実から、父は、調査の時点において、実際にも、駐車場の収入を契約以後、子が申告することとなった具体的な事情やその原因とされる契約書の作成事実を認識していなかったものと認められる。

・調査担当職員の質問に対し、駐車場の収入を契約以降、子が申告することとなった経緯等の詳しいことは分からない旨の回答をしたこと

・使用貸借契約書を知らない旨、また、契約書に印鑑を押印した記憶もない旨申述したこと

・後日、調査担当職員が電話で父に使用貸借契約書の提示を求めた際にも、契約書に印鑑を押印した記憶はなく手もとにもない旨の回答をしたこと

・子の妻を介して契約書の写しが調査担当職員に提出された後、子同席の下で行われた調査の際にもなお、土地の賃料収益を子が申告することとなった事情等の詳細は「分からない」などと回答したこと

・原処分調査の際、父は、子がその居住用として利用している不動産については、固定資産税等を負担した上で子に無償で貸している旨明確に回答していたところ、駐車場に係る契約書の作成についてのみ、あえて虚偽の申述を行わなければならない動機が父にあったとも認められないこと

 

3.次の理由により、父は、その内容を知らされないまま、税理士法人が作成した各契約書への署名・押印を子から求められ、その記載内容を一切確認しないままこれに応じたことが強く推認される。

・1に記したとおり、土地を巡る一連の取引行為は、子から相続対策の相談を受けていた税理士法人が企図したものであること

・1に記したとおり、各契約書の書式も税理士法人が作成したものと認められること

・父は原処分調査の際、税理士から助言を受けていた子から言われるままに申告を行った旨申述していたこと

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2019年5月14日 (火)

空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例(令和元年度税制改正のあらましより)

令和元年度税制改正のうち譲渡所得関係について、改正法令を基にしたあらましについてのパンフレットが国税庁サイトに掲載されています。

 

個人の方が土地・建物や等株式等を譲渡した場合の令和元年度税制改正のあらまし

 

空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例について、相続開始時に被相続人が老人ホーム等に入居していた場合、平成31年4月1日以後に譲渡したものから一定の要件を満たす場合にはこの特例の適用を受けることができることされました。

 

上記パンフレットからこの改正については、以下の2つの事由と要件が重要となります。

 

1.相続の開始の直前において次の事由(特定事由)により、被相続人の居住の用に供することができなかったこと

介護保険法に規定する要介護認定等を受けていた被相続人その他これに類する被相続人が、老人ホーム等(注)に入居等していたこと

(注)老人福祉法に規定する認知症対応型老人共同生活援助事業が行われる住居、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホームその他一定の施設(詳細はパンフレット参照)

 

2.次の要件を満たすこと

・特定事由により被相続人居住用家屋が被相続人の居住の用に供されなくなった時から相続の開始の直前まで、引き続きその被相続人居住用家屋が被相続人の物品の保管その他の用に供されており、事業の用、貸付けの用又は被相続人以外の者の居住の用に供されていたことがないこと

・老人ホーム等に入所をした時から相続の開始の直前までの間において、被相続人が主としてその居住の用に供していたと認められる家屋がその老人ホーム等であること

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2019年4月 5日 (金)

改元後の源泉所得税納付書

5月1日より令和となります。

この改元後においても、「平成」が印字された源泉所得税納付書が引き続き使用可能なことが、下記の国税庁サイトに記載されています。

 

改元に伴う源泉所得税の納付書の記載のしかた

 

上記サイトよりリンクされたリーフレットによると、記載にあたっての留意点があり、事務処理上迷いそうなので抜粋しておきます。

 

・現在お持ちの納付書に印字されている「平成」の二重線による抹消や「新元号」の追加記載などにより補正をしていただく必要はありません。

・平成31年(2019年)4月1日から新元号2年(2020年)3月末日の間に納付する場合、納付書左上「年度欄」は「31」と記載してください。

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2019年1月21日 (月)

敷地を一部譲渡した場合の居住用財産の3千万円控除

 

個人が居住用家屋又は居住用家屋とともにその敷地である居住用土地等の譲渡をした場合、一定の要件を満たすときは譲渡所得の金額の計算上、最高3千万円を控除することができます(措置法第35条第1項、第2項)。

 

 

 

また居住用土地等のみの譲渡であっても、その居住用家屋を取り壊し、その家屋の敷地である居住用土地等を譲渡した場合、次の要件の全てを満たすときは、上記特例の適用があります(措置法通達35-2)。

 

(1)土地等の譲渡契約が、その家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、その家屋を居住の用に供されなくなった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡したものであること。

 

(2)その家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その土地等を貸付けその他の用に供していないこと。

 

 

 

これらを前提に表題のケース、居住用家屋の敷地である居住用土地等の一部を譲渡した場合は、次のような取扱いとなります(措置法通達35-6、31の3-18)。

 

ア.現存する家屋の敷地の用に供されている土地等の一部の譲渡である場合は、家屋の譲渡と同時に行われたものであるときに限り適用があります。したがって、土地等の譲渡が家屋の譲渡と同時に行われたものでないときは適用がありません。

 

イ.その居住用家屋を取り壊し、その家屋の敷地である居住用土地等の一部を譲渡した場合は、上記(1)(2)の要件を満たすときは適用があります。

 

 

 

したがって、居住用家屋を建替えるときにその敷地の一部を譲渡する場合は、家屋を取壊し後に譲渡するときは上記(1)(2)の要件を満たす限り適用があります(上記イ)が、家屋の取壊し前に譲渡したときは適用がない(上記ア)ことになります。

 

 

 

 

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2018年12月14日 (金)

平成31年度税制改正大綱が公表され、空き家に係る3千万円控除が改正・延長に!

平成30年12月14日に自由民主党サイトにて 平成31年税制改正大綱 が公表されました。

 

 

 

この中でまず注目したものが、空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例についてです。

 

相続開始時に被相続人が老人ホーム等に入居していた場合、現行では上記特例は適用できませんが、平成31年4月1日以後に譲渡したものから一定の要件を満たす場合にはこの特例の適用を受けることができるとした上で、この特例の適用期限を4年延長(平成35年・・・2023年12月31日まで)するとしています(大綱21ページ参照)。

 

 

 

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2018年12月 4日 (火)

譲渡費用と弁護士報酬等

 

譲渡所得の金額の計算上、総収入金額から控除されるその資産の譲渡に要した費用の額(譲渡費用)はどういうものか、判例では次のように判断するとしています。

 

 

 

 

 

 

一般的,抽象的に当該資産を譲渡するために当該費用が必要であるかどうかによって判断するのではなく,現実に行われた資産の譲渡を前提として,客観的に見てその譲渡を実現するために当該費用が必要であったかどうかによって判断すべきものである。

 

(詳細については、以下参照)

 

最高裁判決より譲渡費用について

 

 

 

 

紛争となり支出した弁護士報酬その他訴訟費用等について、当然に譲渡費用となるものとして所得税基本通達37-25(2)(注)では、「譲渡契約の効力に関する紛争において当該契約が成立することとされた場合の費用」があります。

 

 

 

このことから、譲渡契約の内容等の紛争による弁護士報酬などが譲渡費用に該当するものと考えます。私見ですが、紛争を予防するため譲渡契約締結までの代理を委任したことによる弁護士報酬なども譲渡費用に含まれるものと考えます。

 

 

 

一方、譲渡費用とされない弁護士報酬として次のものが国税庁・国税不服審判所サイトに掲載されています。

 

 

 

(国税庁サイト 質疑応答事例)

 

譲渡代金の取立てに要した弁護士費用等

 

 

 

(国税不服審判所裁決例要旨)

 

訴訟上の和解により立木の対価の名目で支払われた金員は山林所得ではなく譲渡所得に該当し、訴訟費用、弁護士費用は譲渡費用に該当しないとした事例

 

 

 

買主に本件土地の所有権移転登記を了した後、当該土地の元所有者の相続人から提起された訴訟に係る弁護士費用は、譲渡費用に当たらないとして、請求人の主張を排斥した事例

 

 

 

上記要旨

 

 

 

先に触れた最高裁判決を基に譲渡費用に関して述べられた次の論文が、弁護士報酬と譲渡費用で検索すると上位に表示されます。参考になると思いますのでご覧ください。

 

 

 

譲渡費用概念の法的再検討

 

 

 

 

 

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2018年11月 7日 (水)

介護医療院施設サービス費の自己負担額は医療費控除の対象です

介護保険法改正により、新たな介護保険施設として介護医療院が創設されたそうです。

 

この介護医療院の施設サービス費に係る自己負担額が医療費控除の対象となることが、下記の国税庁サイトで明らかにされています。

介護保険制度下での介護サービスの対価に係る医療費控除の取扱いについて(情報)

 

理由については、下記のとおりです(そのまま抜粋)

 
 

介護医療院は、医療法に定める「病院」又は「診療所」ではないものの、医療法以外の規定(健康保険法等を除く。)では、原則として「病院」又は「診療所」に含まれることとされており(介護保険法第115条第1項)、また、介護老人保健施設よりも高度な医療を提供する施設とされている(介護保険法第8条第29項)ことから、介護医療院の施設サービス費に係る自己負担額は、介護老人保健施設の施設サービス費に係る自己負担額と同様、医療費控除の対象となる。

 

 

確定申告の参考にしてください。

 

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