2018年7月 3日 (火)

土地の取得費は売主の作成した土地台帳記載の金額であるとした裁決事例

長期譲渡所得の金額の計算上、土地の取得費は納税者が主張する公示価額から推計した金額でも課税庁が主張する概算取得費(措置法第31条の4第1項、措置法通達31の4-1)でもなく、宅地建物取引業者である売主の作成した土地台帳記載の金額であるとした裁決事例が公表されています。

なお、この事例は、当初納税者は概算取得費で申告し、その後公示価額から推計した金額が取得費であるとして更正の請求をしているようです。

 

平成29年12月13日裁決

 

この事例で国税不服審判所は次のように判断しました。

 

 
 

下記の点から、この土地台帳の記載内容の信用性は極めて高いため、その記載どおりの事実があったことが推認でき、この推認を妨げる事情が認められない限り、その記載どおりの事実を認めるのが相当である。

 

 

 

1.土地台帳に記載された土地所在地番等と登記簿謄本の記載内容とが一致していることから、この土地台帳に記載の土地が譲渡した土地であることに疑いの余地はないこと。

 

2.土地台帳上の昭和41年11月10日に手付金の支払があった旨、及び同月24日に内金の支払があった旨の記載は、登記簿謄本上の「昭和41年11月24日売買」の記載と、さらに、土地台帳上のローン契約内容の記載は、登記簿謄本上の所有権移転登記の受付が所有権の移転の日から10年経過後である事実とおおむね整合していること

 

3.土地台帳は、宅地建物取引業法により帳簿の備付け義務がある売主が、通常業務の過程で作成したものであり、書面の性質上、取引内容が正確に記載されている蓋然性が高いこと。

 

 

以前受講した研修で言われたのですが、推計による取得費の適用は、取得時の契約書等がなく、実額として疎明できるような資料等も探したがない場合に適用を検討すべきであるとのことです(推計による取得費の概略は下記参照)。

 

長期譲渡所得の概算取得費

 

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2018年6月25日 (月)

厚生年金基金の解散により受け取る分配一時金に係る掛金

厚生年金基金の解散に伴う残余財産の分配一時金は、原則として一時所得とされています。

一時所得の金額は、総収入金額からその収入を得るために支出した金額(直接要した金額のみ)の合計額を控除し、その残額から一時所得の特別控除額を控除した金額とされています(所得税法第34条第2項)。

 

厚生年金基金の解散に伴う残余財産の分配一時金は一時所得であるとした国税不服審判所の裁決例( 平15.10.24裁決、裁決事例集No.66 134 )では、次のように計算しています。

 

 
 

「平成13年分生命保険契約等の一時金の支払調書」の写し

                                                                                                                                               
   

1

   
   

保険金額等

   
   

9,404,250

   
   

2

   
   

差引支払保険金額等

   
   

9,404,250

   
   

3

   
   

既払込保険料等

   
   

0

   
   

4

   
   

保険事故等

   
   

退職以外の一時金

   
   

5

   
   

保険等の種類

   
   

厚生年金基金

   
   

6

   
   

保険事故等の発生年月日 

   
   

平成12929

   
   

7

   
   

保険金等の支払年月日

   
   

平成13425

   
 

 

 

一時所得の金額:9,404,250円-500,000円(特別控除額)=8,904,250

 

総収入金額に算入する金額:8,904,250円×1/24,452,125

 

 

控除すべきその収入を得るために支出した金額(支払調書上、既払込保険料)は0円となっています。つまり、この一時金に係る掛金は控除できないことになります。

これは、厚生年金基金及び企業年金連合会に基づく一時金(退職手当等とみなす一時金を除く)に係る加入員の負担した掛金は、その収入を得るために支出した金額に算入しないとされているためです(所得税法施行令第183条第2項第2号但し書きイ)。

 

理由は、その掛金の額は支払った年の所得控除の対象とされたためと考えられ、小規模企業共済の解約返戻金で一時所得とされるものも同様の取扱いとなります(所得税法施行令第183条第2項第2号但し書きニ)。ただし、この場合には次の例外があります(東京国税局文書回答事例より)。

 

非居住者が支払を受ける小規模企業共済契約に基づく解約手当金に係る一時所得の計算について

 

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2018年6月19日 (火)

厚生年金基金の解散により受け取る分配一時金の所得区分

厚生年金基金の解散に伴う残余財産の分配一時金は、原則として退職に基因して支払われるものではないことから、一時所得とされています。

 

これについて、退職所得であるとして不服申し立てをしたところ、一時所得であるとした国税不服審判所の裁決例が公表されています。

 

平15.10.24裁決、裁決事例集No.66 134

 

国税不服審判所は、次のように判断しています。

 

 
 

次の点から、退職に基因して支払われるものでないこと。

 

・厚生年金基金の解散に基因して支払われるものであること

 

・既に退職した者についてだけでなく、退職の事実がなく引き続き勤務している者であっても支払われるものであり、一時金の支払が退職という事実と関係なく行われること

 

 

 

次の点から、本来の退職一時金とその実質において同様のものではないこと。

 

・分配金の算定方法をみてみると、最低積立基準額相当額に基づいた残余財産の額に応じて算定されていること

 

 

 

以上より、基金の解散という偶発的事由を発生原因とする一時金であり、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものであることから一時所得に当たる(所得税法第34条第1項)。

 

 

ただし、次のようなケースでは退職所得とすることができます(国税庁サイトの下記質疑応答事例より)。

 

母体企業の倒産によって厚生年金基金が解散し、その残余財産の分配一時金が支払われる場合

 

 
 

会社が業績悪化して倒産し、その会社が設立事業所となっている厚生年金基金も解散した。そして、その会社の従業員は全員解雇後に厚生年金基金の解散に伴う残余財産の分配一時金が支払われた。

 

上記の解雇された従業員が受け取った分配一時金は、従業員に退職の事実が認められることから、退職所得として取り扱うことができる。

 

 

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2018年3月22日 (木)

分掌変更に伴い支給した退職給与に関する裁決

代表取締役が代表権のない取締役に分掌変更したことにより法人が退職給与として支給した金額が、実質的に退職したと同様の事情にあるとはいえないことから、法人税の計算上損金不算入とされた裁決事例が公表されています。

 

平成29年7月14日裁決

 

役員の分掌変更等の場合に支給した金額が退職給与として損金算入される場合については、法人税基本通達9--32で例示していますが、この趣旨について裁決では次のように述べています(そのまま引用)。

 

 
 

例えば、常勤取締役が経営上主要な地位を占めない非常勤取締役になったり、取締役が経営上主要な地位を占めない監査役になったりするなど、役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められる場合には、その分掌変更又は改選による再任等に際しその役員に対し退職給与として支給した給与については、法人税法上も退職給与として取り扱うことができるとするのが相当である。

 

 

本事例については、分掌変更後も次のような事実から実質的に退職したと同様の事情にあるとはいえないとして、損金の額に算入できないとしました。また、所得税法上の退職給与にも該当しないものとしており、法人は源泉所得税の問題も発生しています。

 

・トラブル解決のための金員を支払うことを代表取締役等に相談することなく決定するなど、法人の事業に関する重要な意思決定と執行の一部を行っていたこと

・取引先幹部の接待を担当するなど、法人の営業面においても相応の役割を果たしていたこと

・金融機関との交渉の場に立ち会って意見を述べるなど、金融機関との折衝の場面でも一定の役割を果たしていたこと

・経理面においても法人の経費の支出状況を監視していたこと、その他事業及び人事に関する重要な決定事項に関与していたこと

 

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2017年12月27日 (水)

平成30年度税改正大綱より所得金額調整控除(その2)

自民・公明両党より、平成30年度税改正大綱が公表されました。

 

平成30年度税制改正大綱(自民党サイト)

 

平成32年分の所得税から、給与所得控除・公的年金等控除から基礎控除へ10万円の振替がなされます。基本的にこの振替による増減税はないことになりますが、給与収入と公的年金等収入の両方がある者の場合、両控除の減少合計額が10万円を超えて不利になってしまうことがあります。

 

これを調整するため、下記の所得金額調整控除が設けられます。

 

 
 

給与所得控除後の給与等の金額と公的年金等に係る雑所得の金額がある居住者で、両方の金額の合計額が10万円を超えるものの総所得金額を計算する場合、次の計算を行う。

 

 

 

「給与所得の金額」-「給与所得控除後の給与等の金額(限度額10万円)+公的年金等に係る雑所得の金額(限度額10万円)-10万円」

 

 

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2017年12月26日 (火)

平成30年度税改正大綱より所得金額調整控除(その1)

自民・公明両党より、平成30年度税改正大綱が公表されました。

 

平成30年度税制改正大綱(自民党サイト)

 

平成32年分の所得税から、給与収入が850万円を超える場合の給与所得控除額を195万円に引き下げることにより、給与収入が850万円を超える給与所得者は増税となります。

しかし、子育てや介護に対して配慮する観点から、22歳以下の扶養親族が同一生計内にいる者や特別障害者控除の対象となる扶養親族等が同一生計内にいる者については、負担増が生じないよう措置を講ずることとされました。

 

具体的には、下記の所得金額調整控除を設けて調整します。

 

 
 

その年の給与等の収入金額が850万円を超える居住者で、下記に該当するものの総所得金額を計算する場合には、給与等の収入金額(その給与等の収入金額が1,000万円を超える場合には、1,000万円)から850万円を控除した金額の10%相当額を、給与所得の金額から控除する。

 

・特別障害者に該当するもの

 

・年齢23歳未満の扶養親族を有するもの

 

・特別障害者である同一生計配偶者や扶養親族を有するもの

 

 

この所得金額調整控除は、年末調整で適用できることとしています。


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2017年12月25日 (月)

平成30年度税改正大綱より青色申告特別控除額の改正

自民・公明両党より、平成30年度税改正大綱が公表されました。

 

平成30年度税制改正大綱(自民党サイト)

 

平成32年分の所得税より、給与所得控除・公的年金等控除から基礎控除への10万円の振替が行われます。基本的に給与所得控除・公的年金等控除が10万円引き下げられ、基礎控除が同額引き上げられることになります。

 

10万円引き下げられる控除がもう一つあります。

不動産所得または事業所得が生じる事業を営む青色申告者で取引を正規の簿記の原則に従って記録していることその他一定の要件を満たす者に係る青色申告特別控除の控除額65万円(措置法第25条の2第3項)を、平成32年分より55万円に引き下げることとしています。

 

ただし、上記の者であって次の何れかの要件を満たす場合には、変わらず65万円の控除が受けられます。

 

・その年分の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳について、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律に定めるところにより電磁的記録の備付け及び保存を行っていること。

 

・その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表及び損益計算書等の提出を、その提出期限までに電子情報処理組織(e-Tax)を使用して行うこと。

 

期限内に電子申告により所得税の確定申告書、貸借対照表及び損益計算書等の提出を行えば、(その他要件を満たしていれば)これまで通り65万円控除ができるようです。

 

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2017年12月22日 (金)

平成30年度税改正大綱より期限延長の2特例

自民・公明両党より、平成30年度税改正大綱が公表されました。

 

平成30年度税制改正大綱(自民党サイト)

 

この大綱より、平成30年3月31日に期限切れとなるもののうち、実務に影響の大きい下記2項目について適用期限が2年延長となっています。

 

・交際費等の損金不算入制度、接待飲食費に係る損金算入の特例、中小法人に係る損金算入の特例(措置法第61条の4)

 

・法人税・所得税ともに中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(措置法第67条の5、第28条の2)

 

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2017年10月18日 (水)

永年勤続者へ支給する記念品等

使用者である会社等が使用人等へ記念品等を支給した場合、原則として使用人等に対して現物給与を支給したことになり、使用人等は給与として課税(会社は源泉徴収が必要)されます。

 

ただし、使用者が永年勤続した役員や使用人の表彰に当たって、その記念として次に掲げる要件の全てに該当するものを支給する場合には、給与課税しないこととされています(所得税基本通達36-21)。

 

 
 

1.旅行、観劇等の招待費用、記念品(現物に代えて支給する金銭は含まない)の支給であること。

 

2.その役員や使用人の勤続期間等に照らし、社会通念上相当と認められる金額であること。

 

3.その表彰が、おおむね10年以上の勤続年数の者を対象とし、かつ、2回以上表彰を受ける者については、おおむね5年以上の間隔をおいて行われるものであること。

 

 

留意点としては、以下のとおりです。

1.旅行等への招待費用や記念品の支給に代えて、現金だけでなく商品券等を支給する場合も、その全額(商品券の券面額)が給与として課税されます。

 

2.本人が自由に記念品を選択できる場合にも、その記念品の価額が給与として課税されます。

 

以上は、国税庁タックスアンサー 創業記念品や永年勤続表彰記念品の支給をしたとき より。

 

(当ブログより、参考)

記念品として支給する商品券と固定資産税評価額が改訂されなかった家屋の増改築(源泉所得税・財産評価・質疑応答事例より)

 

3.永年勤続者に対する旅行券の支給については、下記の要件の全てを満たしている場合には、給与課税しないこととされています(昭60直法6-4)。

(1)旅行券の支給後1年以内に旅行の実施をすること。

(2)旅行の範囲は、支給した旅行券の額からみて相当なもの(海外旅行を含む)であること。

(3)旅行券を使用して旅行を実施した場合には、支給を受けた者が次の書類等を使用者に提出すること。

・旅行実施者の所属・氏名・旅行日・旅行先・旅行社等への支払額等の必要事項を記載した報告書

・宿泊施設の領収書等(現物給与を巡る税務 大蔵財務協会 より)といった旅行先等を確認できる資料。

(4)旅行券の支給後1年以内に旅行券の全部又は一部を使用しなかった場合、使用しなかった旅行券は使用者に返還すること。

 

3.についての詳細は、下記の国税庁タックスアンサーを参照。

 

永年勤続者に対する旅行券の支給

 

なお、昭60直法6-4(照会による回答)で上記3の要件を満たしていた場合に課税しなくて差し支えないとした支給基準と金額は次のとおりです。

満25年勤続者・・・10万円相当の旅行券

満35年勤続者・・・20万円相当の旅行券


 

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2017年10月12日 (木)

ふるさと納税についての留意点

個人住民税に関する研修を受けてきましたが、通常はあまり意識しないので、すぐ忘れてしまいます。備忘のために、この研修で聞いたふるさと納税の留意点を記しておきます。

 

1.対象となるのは、都道府県、市町村又は特別区に対する寄附金(当たり前ですが、国は対象外)。ただし、寄附した納税義務者がその寄附によって設けられた設備を専属的に利用すること等の特別な利益がその納税義務者に及ぶと認められるものを除きます(地方税法第37条の2第1項第1号、第314条の7第1項第1号)。

 

2.所得税の寄附金控除(所得税法第78条)と住民税の寄附金税額控除により、減税効果は最大「ふるさと納税の額-2,000円」です。ただし、所得税・住民税ともに限度額が設けられていること等のため、少なくなる可能性があります。

 

3.減税効果について、研修での試算では次のとおりでした(復興税は考慮せず)。

(1)給与収入600万円、ふるさと納税55,000円、所得控除は寄付金控除(所得税)と基礎控除(所得税・住民税)のみ

減税効果 53,000円

(2)給与収入600万円、ふるさと納税200,000円、所得控除は寄付金控除(所得税)と基礎控除(所得税・住民税)のみ

減税効果 137,500円

 

4.所得税の確定申告をする場合、ワンストップ特例の手続をしていてもこれは無効となります(詳細は下記参照)。

ふるさと納税ワンストップ特例は確定申告すると無効になります

 

5.所得税の確定申告をする場合、確定申告書第2表下の「住民税・事業税に関する事項」右上「寄附金税額控除」欄一番上「都道府県・市区町村分」に金額を記載すること。


 

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