2019年10月 3日 (木)

居住用宅地等の一部を譲渡した場合の小規模宅地等の特例

相続税の申告期限までに被相続人等の事業用宅地等の一部を譲渡していた場合であっても、譲渡した部分以外の宅地等について、事業の継続と宅地等の保有の要件を満たしているときは、特定事業用宅地等に該当するものとされています(措置法通達69の4-18)。

この取扱いは、特定同族会社事業用宅地等についても準用することとしています(措置法通達69の4-18(注))。

 

詳細は下記を参照してください。

 

事業用宅地等の一部を譲渡した場合の小規模宅地等の特例

 

同通達では特定居住用宅地等(措置法第69条の4第3項第2号)の準用については、一切触れていません。

それでは、庭先といった被相続人の居住用宅地等の一部を相続税の申告期限までに譲渡した場合、譲渡した部分以外の宅地等には、特定居住用宅地等の適用がないのでしょうか?

 

税務相談事例集(大蔵財務協会)では、被相続人の居住用宅地について申告期限までに庭先を譲渡した場合で、配偶者以外の同居親族が取得をしたときの、譲渡した部分以外の宅地等の適用関係について回答しています。

これによると、措置法第69条の4第3項第2号イの要件(相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を有し、かつ、その建物に居住していること)を満たしている場合には、小規模宅地等の特例の適用があるとしています(同書平成29年版他)。

 

なお、上記の場合に配偶者が取得したときには上記イの要件は不要なため、全体について小規模宅地等の特例の適用があるでしょう。

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2019年9月30日 (月)

事業用宅地等の一部を譲渡した場合の小規模宅地等の特例

相続税の申告期限までに被相続人等の事業用宅地等の一部を譲渡していた場合であっても、譲渡した部分以外の宅地等について、措置法第69条の4第3項第1号イまたはロの要件(具体的には下記参照)を満たしているときは、特定事業用宅地等に該当するものとされています(措置法通達69の4-18)。

 

・被相続人の事業用宅地等の場合(措置法第69条の4第3項第1号イ)

被相続人の親族が、相続開始時から相続税の申告期限までにその宅地等で営まれていた被相続人の事業を引き継いで、申告期限まで引き続きその宅地等を有すると共に、その事業を営んでいること。

 

・被相続人と生計を一にする親族の事業用宅地等の場合(措置法第69条の4第3項第1号ロ)

その被相続人と生計を一にする親族が、相続開始時から相続税の申告期限まで引き続きその宅地等を有すると共に、相続開始前から申告期限まで引き続きその宅地等を自己の事業の用に供していること。

 

なお、一部譲渡だけでなく一部貸付けの場合も同様の取扱いとなります。

 

また、この判定は特定同族会社事業用宅地等(措置法第69条の4第3項第3号)についても準用することとしています(措置法通達69の4-18(注))。

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2019年9月 9日 (月)

国税庁長官の指示を受けて評価した相続財産の価額(その2 裁決から見る特別の事情)

国税庁長官の指示を受けて評価した相続財産の価額(その1 裁決から見る解釈) の続きです。

 

平成29年5月23日裁決

 

この裁決事例では、評価通達によらないことが相当と認められるような特別の事情として、どのように判断したのか。

 

まず、次の事実認定を挙げています(要約、一部書き換え)。

 

1.被相続人が借入れを申し込んだ際に、R銀行の担当者は、それぞれ「貸出稟議書」と題する書面を作成した。

その各書面には「採上理由」として相続対策のため不動産購入を計画、購入資金につき借入れの依頼があった旨及び相続対策のため本年1月に不動産購入、前回と同じく相続税対策を目的として収益物件の購入を計画、購入資金につき借入れの依頼があった旨の記載があり、被相続人は借入れを申し込むに際し、R銀行との間で、借入れの目的が、相続税の負担の軽減を目的とした不動産購入の資金調達にあるとの認識を共有していた。

 

2.一件の不動産通達評価額は、この取得価額及び不動産鑑定評価額のそれぞれ約23.9%、約26.5%の価額である。

 もう一件の不動産通達評価額は、この取得価額及び譲渡価額並びに不動産鑑定評価額のそれぞれ約24.3%、約26.0%、約25.8%の価額である。

 

この事実を次のように当てはめています(要約、一部書き換え)。

 

1.各不動産の取得から借入れまでの一連の行為は、各通達評価額と鑑定評価額との間に著しい乖離のある不動産を借入金により取得し、相続税申告において評価通達に定める評価方法により評価することにより、借入金債務合計額が不動産はもとよりほかの積極財産の価額からも控除され、本来負担すべき相続税を免れるという結果をもたらすこととなる。

 

2.被相続人の各不動産の取得の主たる目的は相続税の負担を免れることにあり、各不動産の取得により本来負担すべき相続税を免れることを認識した上で、各不動産を取得したとみることが自然である。

 

3.これは、同様の軽減策を採らなかったほかの納税者との間の租税負担の公平はもちろん、被相続人が多額の財産を保有していないため、同様の軽減策によって相続税負担の軽減という効果を享受する余地のないほかの納税者との間での実質的な租税負担の公平を著しく害し、富の再分配機能を通じて経済的平等を実現するという相続税の目的に反する著しく不公平なものであるといえる。

 

そして、次のように結論づけています(要約、一部書き換え)。

 

各不動産について、評価通達に定める評価方法を画一的に適用するという形式的な平等を貫くことによって、相続税の目的に反し、かえって実質的な租税負担の公平を著しく害することが明らかであることから、評価通達によらないことが相当と認められる特別の事情があると認められる。

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2019年9月 4日 (水)

国税庁長官の指示を受けて評価した相続財産の価額(その1 裁決から見る解釈)

相続税における相続財産の価額は、次のとおりとされています。

 

相続財産の価額は、原則として取得の時における時価による(相続税法第22条)。

この財産の価額は、時価によるものとし、時価とは、相続により財産を取得した日において、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額である。そして、その価額は、財産評価基本通達の定めによって評価した価額による(財産評価基本通達総則1(2))。

ただし、この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する(財産評価基本通達総則6)。

 

令和元年8月27日、東京地方裁判所にて相続開始前3年前後に借入金により購入した賃貸不動産2物件の相続税評価額について、国税庁長官の指示を受けて評価した価額とすることが適当であるとした判決が出たそうです。

 

これは、取得価額合計約13億8千万円の賃貸不動産2件を約10億円の借入金で取得し、3年後の相続時に財産評価基本通達に基づく評価額約3億3千万円として相続税申告したところ、同通達総則6項「この通達の定めにより難い場合の評価」として12億7千万円の評価額によるとした更正処分を受けたことに対する裁判です(週間税務通信NO.3570より)。

 

判決文の詳細はまだ確認できていませんが、その前段階の国税不服審判所の裁決は公表されています。

 

平成29年5月23日裁決

 

この裁決によると、通常の評価が財産評価基本通達によることは次のような解釈によります(要約)。

 

相続財産の価額は、特別に定める場合を除き、財産取得時における時価によるべきもので、この時価とは相続開始時におけるその財産の客観的な交換価値をいう。

しかし、客観的な交換価値というものが必ずしも一義的に確定されるものではないことから、課税実務上は、相続財産評価の一般的基準が評価通達によって定められ、そこに定められた画一的な評価方法によって相続財産を評価することとされている。これは、あらかじめ定められた評価方法によりこれを画一的に評価する方が、納税者間の公平、納税者の便宜、徴税費用の節減という見地からみて合理的であるという理由に基づく。

この評価通達に定められた評価方法が合理的なものである限り、全ての納税者に適用されることによって租税負担の実質的な公平をも実現することができることから、特定の納税者あるいは特定の相続財産についてのみ評価通達に定める方法以外の方法によってその評価を行うことは、納税者間の実質的負担の公平を欠くことになり、許されないものというべきである。

 

例外として総則6による評価ができるのは、相当と認められる特別な事情がある場合で、次のような解釈によります(要約)。

 

評価通達に定める評価方法を画一的に適用するという形式的な平等を貫くことによって、富の再分配機能を通じて経済的平等を実現するという相続税の目的に反し、かえって実質的な租税負担の公平を著しく害することが明らかな場合には、別の評価方法によることが許されるものであり、このことは、評価通達において「通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」と定められていることからも明らかなものというべきである。

すなわち、相続財産の評価に当たっては、特別の定めのある場合を除き、評価通達に定める評価方法によるのが原則であるが、評価通達によらないことが相当と認められるような特別の事情のある場合には、ほかの合理的な時価の評価方法によることが許されるものと解するのが相当である。

 

まとめると次のように捉えられると考えます。

 

1.財産評価基本通達に定められた評価方法が合理的なものである限り、全ての納税者に適用される。

2.実質的な租税負担の公平を著しく害することが明らかな場合といった評価通達によらないことが相当と認められるような特別の事情のある場合には、ほかの合理的な時価の評価方法による。

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2019年7月30日 (火)

住宅借入金等特別控除と居住用財産の譲渡所得の3千万円控除(併用制限のない場合)

以前、措置法第35条の居住用財産の譲渡所得の3千万円控除(以下、「3千万円控除」とします)と措置法第41条の住宅借入金等特別控除の併用制限について書きました。

 

住宅借入金等特別控除と居住用財産の譲渡所得の3千万円控除

 

概略は下記のとおりです。

 

居住年の前々年・前年、居住年及び居住年の翌年・翌々年(居住年を真ん中に5年間)において3千万円控除の適用を受けた場合には、居住年から10年間(適用可能な全期間)について住宅借入金等特別控除の適用を受けることができない。

ただし、住宅借入金等特別控除の適用を受けていた者が居住年の翌年または翌々年に3千万円控除の適用を受ける場合には、その譲渡をした日の属する年分の所得税の確定申告期限までに、その前年分又は前々年分の所得税についての住宅借入金等特別控除を取りやめる修正申告書または期限後申告書を提出し、かつ、期限内に納付すること。

 

では、前年又は前々年に住宅借入金等特別控除の適用を受けていた居住用財産を譲渡して3千万円控除を受ける場合、上記の修正申告等が必要でしょうか。

この場合には修正申告等は不要で、要件を満たせば3千万円控除の適用を受けることができます(ただし、当年、翌年、翌々年の何れかに新たに居住用財産を購入した場合、その居住用財産に住宅借入金等特別控除は適用できません)。

 

上記の修正申告等の取扱いは、住宅借入金等特別控除の適用を受けていた居住用財産以外の財産を譲渡して3千万円控除の適用を受ける場合のものです(措置法第41条第21項)。

 

(上記の修正申告等の取扱例)

新居住用財産を購入して住み替え後の3年経過年の末日までに、旧居住用財産を売却する場合。

新居住用財産に住宅借入金等特別控除を適用していたところ、旧居住用財産に3千万円控除を適用しようとするときは、上記の修正申告等の取扱いの対象となる。

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2019年7月26日 (金)

遺留分侵害額の請求で金銭以外の資産の移転があったとき

民法改正により令和元年7月1日の相続以降、遺留分権利者等は遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができることとされました(民法第1046条第1項)

これにより、令和元年7月1日の相続以降は遺留分権利者等の遺留分侵害額に対し金銭以外の資産を移転した場合、代物弁済として課税関係が生じるのかどうか注目されていました。このほど、所得税基本通達33-1の6が新設され、代物弁済として課税関係が生じることが明らかになりました。同通達の要約は下記のとおりです。

 

遺留分侵害額相当の金銭の支払請求があった場合において、金銭の支払に代えて、その債務の全部又は一部の履行として資産の移転があったときは、その履行をした者は、原則として履行時の消滅債務相当額によりその資産を譲渡したこととなる。

 

したがって、移転した資産が譲渡所得の対象となる資産で、譲渡益が生じる場合、譲渡所得課税の問題が生じることになります。

 

なお、この履行を受けて移転した資産の取得についての同通達38-7の2も新設され、その要約は下記のとおりです。

 

遺留分侵害額相当の金銭の支払請求があった場合において、金銭の支払に代えて、その債務の全部又は一部の履行として資産の移転があったときは、その履行を受けた者は、原則として履行時の消滅債務相当額によりその資産を取得したこととなる。

 

代物弁済なので、代償分割等と同様な課税関係になるようです

 

(参考)所得税基本通達新旧対照表

「所得税基本通達の制定について」関係(P53からP55

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2019年7月22日 (月)

要介護認定等の判定時期に注意(空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除)

空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除(措置法第35条第3項)は要介護認定等により一定の老人ホーム等へ入居していた場合でも適用が可能となりました(同条第4項、措置法施行令第23条第6項)。概略は下記を参照してください。

 

空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例(令和元年度税制改正のあらましより)

 

この場合における要介護認定等の判定時期が措置法通達35-9の2の新設で明らかになり、下記のとおりとされました。

 

被相続人居住用家屋がその被相続人の居住の用に供されなくなる直前において、その被相続人が要介護認定等を受けていたかにより判定する。

 

つまり、老人ホーム等へ入居する直前に要介護認定等を受けている必要があります。

 

似たような取扱いが相続税の課税価格の計算特例である小規模宅地等の特例(措置法第69条の4)にありますが、この場合は被相続人の相続開始直前において認定を受けていたかにより判定することとされています(措置法通達69の4-7の2)。

判定時期が異なっているので、要注意です。

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2019年7月18日 (木)

配偶者居住権の消滅による課税関係

令和2年4月1日より民法において配偶者居住権が新設されますが、その消滅に係る課税関係がどうなるのか注目されていました。

この度、相続税法基本通達9-13の2が新設され、配偶者居住権の消滅に係る課税関係が明らかになりました。

 

これによると、次の場合において対価を支払わないで又は著しく低い価額の対価で消滅させたときは、建物又はその敷地所有者はその利益相当額をその配偶者居住権を有した者から贈与で取得したものとみなす(相続税法第9条)こととされました。

・建物所有者との合意による解除

・配偶者による配偶者居住権の放棄

・配偶者が善管注意義務違反又は承諾無しに建物の増改築をした場合において、建物所有者の是正の催告に応じないときの、建物所有者の意思表示による消滅

 

この通達のさらに重要な部分が注書で、次の場合は上記相続税法第9条の適用はないとしています。

・期間満了による消滅

・配偶者の死亡による消滅

・建物の滅失その他の事由による消滅

 

配偶者の死亡による配偶者居住権の消滅については課税関係が生じないことから、配偶者居住権を有する者の相続に係るその配偶者居住権の相続税の課税価格に算入する金額は0円ということになるようです。

 

なお、配偶者居住権の存続期間は、民法第1030条において次のとおり規定されています。

配偶者居住権の存続期間は、配偶者の終身の間とする。ただし、遺産の分割の協議若しくは遺言に別段の定めがあるとき、又は家庭裁判所が遺産の分割の審判において別段の定めをしたときは、その定めるところによる。

 

(参考)相続税法基本通達新旧対照表

新旧対照表別紙1(PDFファイル/337KB

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2019年7月11日 (木)

令和元年度小規模宅地等の特例の改正通達

平成31年度(令和元年度)税制改正で小規模宅地等の特例における特定事業用宅地等について、3年縛りの改正がされました。

この改正等に伴う措置法通達改正の新旧対照表が公開されています。

 

新旧対照表別紙2(PDFファイル1,746KB

 

特定事業用宅地等の3年縛り改正分は、以下のとおりです(全て新設)

 

69の4-20の2 新たに事業の用に供されたか否かの判定

69の4-20の3 政令で定める規模以上の事業の意義等

69の4-20の4 相続開始前3年を超えて引き続き事業の用に供されていた宅地等の取扱い

69の4-20の5 平成31年改正法附則による特定事業用宅地等に係る経過措置について

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2019年7月 8日 (月)

適用関係早見表(小規模宅地等の特例の改正について)

平成30年度及び令和元年度の小規模宅地等の特例の改正について、経過措置を含めた適用関係早見表を作りました。

私自身が出先などで確認するためにアップしたものですので、自己責任の下でご利用ください。

間違いなど気がついた点がありましたなら、是非お知らせください。

適用関係早見表

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